細胞療法の発展に向けたBMSの現在のアプローチ、より多くの患者さんの未来のために
ブリストル マイヤーズ スクイブ細胞療法部門プレジデントLynelle Hoch
がんは、今なお世界中で最も恐れられている病気のひとつです。毎年数百万人が新たに診断を受け、命を落としています。しかし、近年では、がん研究の分野で過去に例がない飛躍的な進展やイノベーションが起きています。がん患者さんの余命も伸びています。さらに、当初はがん治療の領域で見られた進歩が、他の重篤な疾患の患者さんにも効果を発揮し、アウトカムの改善をもたらし始めています。
近年の最も有望な科学的進歩のひとつは、BMSが重点的に取り組む分野である細胞療法です。細胞療法は、治療へのアプローチに革命を起こし続けています。血液がんだけでなく、特定の自己免疫疾患、神経疾患、固形腫瘍の治療にも変革を起こす兆しを見せています。
細胞療法は比較的新しい分野ですが、業界全体でこの20年間に次々と驚異的な進展が起きました。2002年に初めて有効性のあるCAR T細胞が開発され、現在は、血液がんを対象にFDAの承認を受けた6種類の細胞療法製剤が市販されています。細胞療法を受けた患者さんは、数万人を越えています。標的が異なる2種類の細胞療法について製造販売承認を取得している唯一の企業であるBMSは、この業界のリーダーとして、重要な役割を担ってきました。
私たちは今、過去数十年の先駆的な知見を活かして、人生に違いをもたらす、あるいは命を救う可能性があるこの治療選択肢を、将来的に多くの患者さんが利用できるようにするという大きな目標を掲げています。研究者、医療従事者、パートナーのたゆまぬ努力を通じて、進歩への道を共に歩む必要がありますが、力を合わせれば、細胞療法という期待の分野の先駆者になれると信じています。
私たちは、BMSの細胞療法製品をより多くの患者さんに届け、いくつかの分野で確実な研究開発プログラムを継続的に進めるために、細胞療法フランチャイズにこれまで140 億ドル以上を投資してきました。 この投資を通じて私たちが、患者さんを中心に据えた未来へのビジョンをどのように実現しているかを紹介します。
細胞療法の発展に向けたBMSの取り組み
イノベーション、パートナーシップ、そして細胞療法の可能性を解き放ち、さらに多くの患者さんを治癒に導くという揺るぎない決意を通して、細胞療法の進歩に向けたBMSのロードマップが具体化しつつあります。その方向性の一部を、ここに紹介します。
- 事業経営課題への対応: 細胞療法の複雑性から、業界は初期の需要を満たす上で多くの課題に直面してきましたが、私たちはこの面での継続的な進歩を誇らしく思っています。自家CAR T細胞療法には、個別化治療として長期的な価値があると確信しており、次世代のベクター、手法、工程への移行を進めながら、スロット数を増やすため製造能力強化にも投資するなど、生産量を増やし速やかな安定供給を可能にする手段を重点的に検討しています。さらに、納品までの時間を短縮し生産規模を拡大するために、自動化に多額の資金と労力を投入しています。
こうした努力を支えるために、私たちは、グローバルで安定的な製造拠点ネットワークの整備に粘り強く取り組み、次世代技術への移行を進め、細胞療法の増大する需要に応えて未来を推進するために業界で最も優秀な人材を集め、自動化と工程改善を通じてパフォーマンスを向上させています。 - 研究の推進: CD19とBCMAを標的としたCAR T細胞療法を、特定の血液がんの早期治療ラインで使用できるようにすると同時に、奏効の期間と程度に注目して、新たな標的や、有効性を高める二重標的療法の研究を行っています。
CAR T細胞療法の固形腫瘍への展開に加えて、BMSは、がんのみならず自己免疫疾患、神経炎症性疾患への適用拡大に取り組んでいます。例えば全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんは、生涯に何度も再燃を経験し、その度に症状が悪化することも多く、重篤な事例では臓器不全や死亡にさえ至ります。現在、SLEには完治できる治療法はなく、症状管理に役立つ治療薬が体に負担をかけ、従来療法では治療が難しくなる場合もあります。
もうひとつの重要な例は、多発性硬化症(MS)です。多発性硬化症の患者さんは、倦怠感、衰弱、筋痙攣を経験することがあり、進行して重篤化すると、視覚障害、排尿障害、認知機能障害、身体障害を引き起こす場合もあります。現在MSは完治せず、治療戦略の目標は、症状管理、再発の治療、進行の抑制を通じて患者さんの生活の質を改善することです。
最後に、ドナーの細胞を使った”Off-the-shell”プラットフォームや、幹細胞iPSCなど、さらに多くの患者さんに役立つ可能性がある数々の製造プラットフォームを検討しています。 - 規制当局との連携: 私たちが力を入れているもうひとつの分野は、グローバルな規制当局との緊密な連携であり、現在および将来の細胞療法の価値と複雑性を規制当局に十分に理解してもらうことを目指しています。これは、どんな新技術であっても時に難しいものです。早い段階から規制当局と連携して知識を増やし理解を深めることで、審査手続きの改善と迅速化に寄与し、できる限り多くの患者さんが新製品を使用できるようにします。
この画期的な技術への信頼を築き、理解を定着させるために、エコシステムと協力して、細胞療法という画期的な分野を進展させ続ける機会を得られたことを光栄に思っています。
私たちが細胞療法の未来に投資しているのは、この療法がイノベーションを実現する可能性を信じているからです。さらに多くの患者さんが細胞療法を利用できるよう、この分野の発展に寄与できればと願っています。