プレスリリース
「アベクマ®点滴静注」、CAR T細胞療法として日本で初めて再発又は難治性の多発性骨髄腫の早期治療ラインでの使用に対する承認を取得
がん領域
2023/12/06
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
※本プレスリリースに記載されている再生医療等製品情報(本邦未承認情報を含む)は、ブリストル マイヤーズ スクイブに関連する最新情報をステークホルダーの皆様にお知らせするものであり、医薬品のプロモーションや宣伝・広告を目的とするものではありません。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は、本日、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするCAR T細胞療法(キメラ抗原受容体遺伝子改変自家T細胞療法)「アベクマ®点滴静注」(一般名:イデカブタゲン ビクルユーセル)について、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む2つ以上の前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫に係る再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。
アベクマは、ファースト・イン・クラスのBCMAを標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞免疫療法です。アベクマが多発性骨髄腫細胞の表面にあるBCMAを認識し結合すると、CAR T細胞が増殖することによりサイトカインを放出し、結果としてBCMA発現細胞が融解・殺傷されます。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社研究開発本部長の杉田真は次のように述べています。「多発性骨髄腫は既存の治療法では治癒が困難な再発を繰り返す難治性の疾患です。再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんの治療選択肢は限られており、CAR T細胞療法であるアベクマがこのような患者さんのアンメット・ニーズに対応する治療選択肢として、より早期治療ラインでの使用を初めて認められたことを嬉しく思います。弊社では、今後も深刻な病気を抱える患者さんの人生に違いをもたらすために、革新的な治療法の研究開発に注力してまいります。」
今回の承認は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤のダラツムマブを含む2から4レジメンの前治療歴を有する再発及び難治性の多発性骨髄腫患者を対象に、アベクマの有効性および安全性を検討する国際共同第Ⅲ相KarMMa-3試験(BB2121-MM-003試験)の中間解析結果にもとづいています。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、アベクマ群で13.3ヵ月、標準療法群で4.4ヵ月であり、アベクマ群では標準療法群と比較して統計学的に有意で臨床的に意義のあるPFSの延長が認められ、病勢進行又は死亡のリスクを51%低下させました[ハザード比=0.493(95.0% CI:0.377~0.645)、p < 0. 0001(層別ログランク検定)]。主な副次評価項目である全奏効割合(ORR)についても、アベクマ群で71.3%、標準療法群で41.7%であり、事前に規定された階層的検定によりアベクマ群では標準療法群と比較して統計学的に有意な改善が認められました[オッズ比=3.54(95.0% CI:2.26~5.54)、p < 0.0001(層別Cochran-Mantel-Haenszel検定)]。また、本試験において、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤およびダラツムマブを含む2から4レジメンの前治療歴を有する再発及び難治性の多発性骨髄腫患者において、アベクマの新たな安全性シグナルは認められませんでした。
PFSの最終解析および中間全生存期間解析を含む第3相KarMMa-3試験の結果は、2023年12月9日~12日にカリフォルニア州サンディエゴで開催される第65回米国血液学会年次総会・展示会で発表される予定です。
KarMMa-3試験(BB2121-MM-003試験)について
本試験は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、ダラツムマブを含む2~4レジメンの前治療歴を有し、直近の治療に難治性であった再発および難治性の多発性骨髄腫患者において、アベクマと標準療法を比較評価したピボタルな第Ⅲ相国際共同多施設共同無作為化試験です。386名の患者(日本人9名を含む)はアベクマ群または標準療法群のいずれかに無作為に割り付けられました。標準療法群は、ダラツムマブ+ポマリドマイド+デキサメタゾン(DPd)、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DVd)、イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(IRd)、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(EPd)を含む併用療法で構成され、最新の治療レジメンと医師の判断に基づいて選択されました。本試験の主要評価項目は無増悪生存期間であり、無作為化の時点から最初の病勢進行またはあらゆる原因による死亡のいずれかが最初に認められた時点までと定義されました。主な副次評価項目には、奏効率および全生存期間が含まれます。
多発性骨髄腫について
多発性骨髄腫は、B細胞から分化した形質細胞ががん化して骨髄腫細胞となり、主に骨髄で増殖する病気です。形質細胞は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守る抗体を作る役割をしますが、形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、異物を攻撃する能力がない単クローン性免疫ブロブリン(Mタンパク)を産生し続けます。骨髄腫細胞やMタンパクが増えることにより、貧血を主とする造血障害、腎臓障害、溶骨製病変等の多彩な臨床症状が現れます1,2。
近年、多発性骨髄腫の治療法は大きく進歩しているものの、初回治療に奏効を示しても、その後再発を繰り替えし、治療を重ねるごとに悪性度が増し、最終的に難治性に進行します3,4,5。主要な薬剤クラスであるプロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、抗CD38抗体製剤による治療を受けた再発又は難治性の多発性骨髄腫患者の予後は前治療の数に関わらず不良であり、治療選択肢は限られています。また、近年は初回治療または初回再発時の治療に抗CD38抗体製剤と免疫調節薬又はプロテアソーム阻害剤との併用療法を使用する頻度も増加しています。そのため、前治療歴が少ないにも関わらず、これらの薬剤に対して再発又は難治性の多発性骨髄腫患者にも、高い有効性が期待される新規作用機序を有する治療薬が必要とされています。
アベクマについて
国内では、2022年1月20日に、「アベクマ®点滴静注」として製造販売承認を取得し、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む3つ以上の前治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫に係わる適応を取得しました。海外においては、米国では2021年3月に、「免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む4つ以上の前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫の成人患者の治療」として、欧州では2021年8月に、「免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤、抗CD38抗体製剤を含む3つ以上の前治療を受け、最後の治療で病勢進行が認められた再発及び難治性多発性骨髄腫の成人患者の治療」として、製造販売承認を取得しています。その他、カナダ、スイス、イギリス等でも製造販売承認を取得しています。また、本試験の結果にもとづいて、日本、米国、欧州において同時申請が行われており、米国、欧州において現在、承認審査中です。
【製品概要】
販売名 |
アベクマ®点滴静注 |
一般名 |
イデカブタゲン ビクルユーセル |
製造販売承認事項一部変更承認日 |
2023年12月6日 |
効能、効果又は性能 |
再発又は難治性の多発性骨髄腫。ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。
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効能、効果又は性能に関連する使用上の注意 |
臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本品の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。 |
製造販売元 |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社 |
※下線は今回の承認に基づく変更点
参考文献
- がん情報サービス「多発性骨髄腫」(2023年10月時点)(https://ganjoho.jp/public/cancer/MM/index.html)
- 日本骨髄腫学会編, 多発性骨髄腫の診療指針第5版, 2020.
- Yong K, Delforge M, Driessen C, et al. Multiple myeloma: patient outcomes in real-world practice. Br J Haematol. 2016;175(2):252-64.
- Gandhi UH, Cornell RF, Lakshman A, et al. Outcomes of patients with multiple myeloma refractory to CD38- targeted monoclonal antibody therapy. Leukemia. 2019;33(9):2266-75.
- Kumar SK, Dimopoulos MA, Kastritis E, et al. Natural history of relapsed myeloma, refractory to immunomodulatory drugs and proteasome inhibitors: a multicenter IMWG study. Leukemia. 2017;31(11):2443-8.
ブリストル マイヤーズ スクイブについて
ブリストル マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルバイオファーマ企業です。詳細は、bms.com/jp、LinkedIn、Facebook、YouTube、Instagramをご覧ください。